『魂萌え!』 『漂流トラック』 「DOG DAY AFTERNOON」

忘れそうなのでまとめていっときます。
『魂萌え!』 桐野夏生
桐野夏生さんといえば、直木賞をとった『OUT』以降、クライム小説あるいはグロテスク路線で名を馳せていらっしゃる。去年、『アイムソーリー・ママ』という作品を読んで、そのあまりの救いのなさに脱力してしまって以来、この作家からは遠ざかっていたのだけど。
久しぶりに読んでみました。実は実家がとっている新聞に連載されていたため、何度か目にしていたので、そこそこ安心感もありました。
うん、いいですね、楽しめる小説でした。
こういう専業主婦っていると思うし、こういう息子も、こういう娘も、いると思う。どこをとっても何の変哲もない、庶民の日常。これだけで十分、小説の題材になるんですね。もちろん、この作家の力量をもってしてですが。
私は桐野夏生さんの、『ファイアボール・ブルース』1・2や、初期の探偵ミロシリーズが好きです。その後のリアリズム・グロテスク系はちょっと。読んでみたい気はありますが、よほどこちらの体調がいいときでないと負けそうです。
★★★★☆ 星4つから3.5の間
じゅうぶん楽しませていただきました
『漂流トラック』 安東能明
初めて読む作家さんです。ミステリーです。
うーん・・・・・・。ムヅカシイな。
主題として選んだものはよかったと思うし、この主題を描ききれたら、すばらしかったと思います。残念ながら、この主題を描くために著者が作り上げた筋書きが、弱かった。最初から最後までを1本の道で通すことができなかった。登場人物は少ないのに、魅力的に描ききれなかった。いろんな事実が明確に結びつかなかった。一人ひとりの人間が抱えたもの、そこから導き出される行動の動機付けが、弱かった。
小説の冒頭に2つのプロローグが挿入されています。
特にその最初のプロローグは、完全に余計だと思いました。どうしても書きたかったんだろうとは思うのですが(そういうことってあるんだろうけど)、でも、余計だった。それを入れる必要がどこにあったのだろう? もったいない。
ミステリー小説のプロローグといえば、なんと言っても高村薫の『マークスの山』のそれだろうと、私は勝手に思っているのですが。この冒頭部分は圧巻でした。ここを読むだけでも価値があると思ってしまうくらい。臨場感アリアリの、読んでるだけで恐怖を覚える闇の山中の描写。
あれはすごかったな。
★★☆☆☆ 星2つ
生き返らせてどうする!(読んだらわかります)
「DOG DAY AFTERNOON」
読んだんじゃなくて映画ですが。ちょうど衛星放送でやっていたので見ました。アル・パチーノは好きな俳優です。
間抜けな銀行強盗の話です。あまりにも間抜けで手際が悪く、警察に包囲された後で銀行員からも「どうしてさっさと終わらせて出て行かなかったんだ」と説教される始末。ゲイの恋人やら、デブでおしゃべりの女房やら、自分勝手にわめき散らす母親やら、いろんな人間が出てきてアル・パチーノを苦しめます。
その一方で、ベトナム戦争に倦んだ市民が、アル・パチーノをヒーローに見立てて大騒ぎ。ピザの配達人なんかは大喜びでやって来たりします。
情けない人間の、情けない人生と、情けない人間関係。実も蓋もないって感じだけど、描く意味も、それを見る意味もあると思わせる映画でした。
★★★★☆ 星4.5です(半分のホシがなくてねぇ)
実話だったんでびっくり

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