「改善」、チベットのことなど

数日前にNHK衛星でチベットの特集番組があり、知らなくて前半見逃しましたが途中から見ました。四川省のラルンガルゴンパと、同じく四川省の徳格が主に取り上げられていました。どちらも行ったことのある場所で、ほほぅーと思いながら見ました。徳格のほうは少し前にニュース番組で同じ映像を見たので、あれは先出しだったのですね。

 ラルンガル 2011年6月
ラルンガルは四川省のかなりの山奥にある巨大寺院。寺院が巨大というよりは、寺院を囲む僧坊群がとにかく多く、谷の斜面を埋め尽くす様はなかなか壮観でした。私が行った時には特に外国人禁止令などはなかったと思います。検問もなく公安にも会わなかった。1~2時間の滞在で特に心動かされることもなく去りましたから、あまり「特別な場所」としては記憶していません。
「喧嘩するな」とか「大声禁止」みたいな貼り紙がやたら目に付いたのはよく覚えています。
ラルンガルについては前に一度書いてます、ご参考まで

ここが数年前から中国政府の「改善」政策により、集まってきている僧侶が帰されたり、僧坊が一部破壊されたりしている、とありました。そして一大観光地化するらしいです。
なるほど、と思います。中国はこのような形で人がグループ化されることを嫌いますから。チベット仏教に対してだけではなく、あらゆる宗教に対して。法輪功やらキリスト教系への弾圧も激しいものがあります。
「改善」の名のもとに、徳格では遊牧民を定住させる「脱貧困村」が出来、そこでは人びとは「党に感謝」することを叩き込まれる。その踏み絵を踏んだら家とかインフラや最低限のお金が得られる職を与えられるようです。
どういうふうに生きていくことが幸せなのか、それはどこの国のどんな民族の人でも考えることだけれども。複雑な気分で番組を見ました。
そしてとにかく思うのは、中国ってすげーな。ということなのでありました。

 あんたもコルラかい?
これは四川省の西の端っこに近い、えぇとどこだっけ? リタンだ、そこのお寺の周囲を回る徒歩道で会った人たち。こういう出会いには心動かされます。
リタンの町の中心は大きなロータリー様の交差点でしたが、そこには常に公安の車両が何台もいて、人びとを監視し、少しでも「集まる」気配があると拡声器で怒鳴り散らして「解散」させているのでした。

誰にも止められない流れの中、上手に泳いでいってほしいと思う。

 

 『夢も見ずに眠った。』 絲山秋子
一組の夫婦の25年。結婚し、妻の実家での同居生活があり、妻の単身赴任があり、夫が鬱病になり、そして・・・・・・。折々にどこかに出かける、その旅先での二人が描かれることで小説が動いていく。ちょっとロードムービーっぽくもある。細切れだから違うんだけど。
いつもこの人の小説を読むと思うのは、なぜこんなにわかるんだろう、ということ。読んで考えてわかると「思う」のではなく、読んだ時にはもうわかっているというか。誰にでもあるであろう語るほどのことではない傷だったり引っかかりだったり、すれ違いだったり齟齬だったり、もやもやするものや悲しいと思うこと、そういうものをこんな風に文字にして読ませてくれる作家ってあまりいないんだよなと思う。
夫が突然「わかる」場面があるんだけど、そこは泣いた。
☆5 いい。

 

まったく小説とは関係ないんだけど、読書メーターという本の感想を書き込む掲示板のようなところを覗いてみて、
「絲山先生、すごくいいよね」
「そうそう、絲山先生って・・・」
というような書き込みが散見された。
それがどんな大作家であろうとも、「先生」を付けて呼ぶってことが、理解出来ないし自分は虫酸が走るほど大っ嫌いだと思った。

高崎行ってから花粉症が悪化中、これからどんどんひどくなると思うと嫌だなー。ではまた