最初に思い浮かぶのは池澤夏樹の『インパラは転ばない』ですが、『インパラの朝』という本を読みました。
旅で出会った友人が、少し前にこの本を紹介していたので読んでみました。読む前にちらっとアマゾンの書評を見たら、酷評が多くて「?」と思いながら、でした。なぜならこの本は開高健賞を取っている、正統派だと思ったからです。
アジアから中東、アフリカを経てヨーロッパまで、2年弱の旅の話。記録というよりは1国または1都市1編の小編の積み重ねです。読み始めて最初に「中国、こんだけかよっ!」と突っ込んでしまったくらい、それはそれは短い小編が積み重なっていく。国の数が多いのでこれは仕方がないのでしょう。
読み終わったけど、微妙だな・・・・・・。
砂を噛んだような感じ、というのが最も近いかな。
冷静で知的な文章はとてもいいし、感情を交えずに淡々と語られていくその手法も悪くないのだけど、全体に作り込み過ぎというか、最初から作られたものを演じたような、どこか白々したものを感じる。篠田節子の小説に私が感じる無機的な違和感に似ている。よくできている、とてもよくできているのだけど、血肉がないような。体温がない。
愚かじゃない人が旅をするとき、目的は別にある。
たぶん著者は、この旅の先に見ているものがあったんだろう。
著者と出版社が狙ったのは、「美人すぎるノンフィクション作家」という肩書だと思う、そういう本造りでした。
願わくば。これで「開高健賞ってこんなもん?」と思った人たちが、この次に受賞した『空白の5マイル』をスルーしなかったことを。これは文句なく面白かった!
心配した雪は5センチほどですみ、今日はそこそこ晴れたので少し解けました。3月に入りましたが、まだまだ真冬日連続で、今週は雪も続きそうです。春は遠いです。ではまた