久々に本の話

『原稿零枚日記』 小川洋子

芥川賞を獲り、今は芥川賞選考委員をやっている小川洋子さんの小説。
原稿が書けない自分の毎日を綴った随筆かと思ったら、そうではなくて、日記の体をなした立派な小説でした。
この人の文章はほんとうに丁寧に書かれているな、と思います。
言葉を丁寧に扱っている、と感じる。
言葉というものに対して、誠実で真摯だと感じる。
大事なことだ。
これでもかとばかりに細部を書き込んでいく小説が増えて、どの本も分厚くて読む気が失せるようなものばかり、それほどたくさんの言葉が紡がれているのに、読み終わっても何も残らない小説も多い。
書くという行為は、実に難しい。

日本人に生まれて、日本語を学んできたのだから、書くことは誰にだってできる。
でも、人に読ませる文章を書くことは難しいし、伝えたいことを的確に表現することはさらに難しいし、物語ることはさらに難しいし、何よりいちばん難しいのは、その人にしか書けないものを書くことだ。

いい小説でした、★4.0

4.0なのは、自分がやっぱり没入できなかった分。それを作品からマイナスするのは酷な気もするが。
どうもまだ、魂とかっちり噛みあっていないというか、魂ほんのちょっと遊離中というか。
そういえば去年見た夜会の中で、みーさんが「ココロナラズ ココロココニアラズ」と、早口言葉みたいに何度も何度も歌で繰り返す場面があったっけ。とちってしまうのじゃないかと、心配になる場面(笑)。

そういえば今日、カバンのマチの作り方で確認したいことがあってググっていたら、「通園バッグ・おてさげ の作り方」というのを発見して目を疑った。「おてさげ」。言うか? 誰にだって日本語は書ける、でも・・・w

もひとつそういえば。
本の話を書いてもあらすじは滅多に書かないのは、要約してあらすじにまとめるのが苦手だから(あるいはめんどくさいから)に他ならないのだけど、この小説の主人公は、あらすじ巧者という設定なんですわ・・・。

ではまた