旅ぶくろ

この間読んだ『草笛の音次郎』は、若い渡世人の音次郎が、親分の名代として初めて江戸を離れ、旅をしながら成長していくという話でした。
旅立った朝、船の中で役人の検問を受け、道中手形や大金を行李に入れていた音次郎がなかなか取り出せず、要領が悪いと皆から責められて恥をかく、というシーンがあるのですが、昔も今も同じだなーと微笑ましくなりました。
実際、旅をするときに一番気を使うのが、道中手形つまりパスポートとお金の管理ですよね。これをどこに入れてどう持つか、ってのは、かなりの難問です。自分が今日どこに行くか、どんな状況に置かれるか、によっても、それは変わってくるわけです。出入国や飛行機に乗る日なら、パスポートはすぐ出せるところに。銀行に行く日には、ある程度の金額を出しやすいところに。そのときパスポートは必要か? なんてことも含めて。長距離バスに乗る日なら、車内に持ち込む荷物の中に。それも体から離さないところに。すられないところに。
私はズボンのポケットなんつう怖ろしい場所にはとてもとても入れられないタチなので、それはそれは考えます。たいてい、出す予定がなく死守すべき時間が長い条件下では、腹巻にしていることが多いかな。
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でも、たとえば慣れ親しんだタイの地方都市などで、乗り物に乗る予定もなく、あたりをぷらぷらするだけなら、こんな袋に全部突っ込んで歩いたり、もします。もちろん、大量の現金のない時ですけどね。私のコレを奪っても、キャッシュはないですよ、因みに。
これは、プーケットの近くの村で植物染めをやっているおばさんから、仕入れの時に「これは失敗作だからあげる」と貰ったもの。この仕事をしていると、よく「疵物だからあげる」とか「ハンパものだからあげる」とか、あるんです。「水飲んでけ」とか「ごはん食べてきな」なんてことも、よくあります(笑)。
バックパッカーだった時は、お金を使わない旅を当たり前のようにしていました。だからこの仕事を始めたときは、あまりに大金(私にとって)が動くので、鼻血が出そうでした。ありえない額を両替するのも怖かった。旅人のときは、航空券を買うとき以外に、5万以上換えるなんてないですからね。
でも、今の自分は、ある程度お金を使うことは必要だ、と痛感しています。ケチなだけの旅行者は嫌われる・・・。ほんとは持ってるのにただケチなだけの人、「値切り倒す」なんて言葉を平気で使う人、現地でも嫌われてるし、私も嫌いだ・・・。相手はそれで暮らしてる、相手の儲けも必要だ、相手に好かれなければいい関係なんて築けない。言いなりに出せ、ということではなく、相手も自分も納得するラインがある、それを相手側に押し切ったらいかん、ということなんです。もひとつ踏み込むと、そのラインよりちょっと相手が得するところで引いてみる、これなんかもある意味奥義ですよね。これができたらね、たいしたもんだと思います。相手にも好かれるし、バカにもされないしね。
「きれいに金を使え」「きれいに遊んできな」
音次郎はそう教えられて旅立ちます。自分が商売をしているせいか、この言葉は非常に奥が深い、大事なことが含まれている言葉に思えます。旅にも通じますね。
人生、学ぶことだらけですな・・・。
明日は雨模様の涼しい日になりそうです。